犬儒のブログ

当事者のアマチュア文芸雑誌の編集顧問を務めています。『ノルウェイの森』の直子と同病の単純型統合失調症です。

「全日本手をつなぐ育成会」へのメール(2012/9)

突然恐れ入ります。精神科入院病棟の未認定の知的障害者と思われる方々につきまして。


初めまして。
北海道で、統合失調症で入院したことがある者ですが、ウィキペディアの「知的障害」「知能指数」などを調べると、健康でもIQが70無い方が、人口の2.2%、全国で280万人以上いるとのことでした。
どうも社会資源など見ていますと、何らかの病気で知能が低くなった方などが60万人程度だけ知的障害の認定を頼んで療育手帳を持っているくらいなのが実態で、250万人くらいの方が、未認定のまま健常者として働いていたりするのが実態のようです。

衆議院議員で受刑した山本譲司さんの『累犯障害者』(新潮社)などでも問題提起されておりましたが、知的障害者の方というと勤勉な印象も強いですが、みんなそうだと思うのもある種の偏見かもしれません。

どうも「性格の損」な方とか、トラブルを起こして精神科に入院しているうちにいつの間にか精神病という事になっているようなのが、全国三十数万床のうち、地元の病院の印象ですと、1/3くらいは未認定の知的障害者の方のような印象もあります。
統合失調症でも知能は下がることが多いのですが、最近ではこの疾患ではだいたい1カ月くらいで退院できます。

一例だけ挙げますと、


 略歴
1976年生まれ。
親は夜逃げした中小企業の社長。
箸すらまともに持てない。
中卒後、職業訓練校中退、定時制高校中退。
親が社長だったせいか、話ばかりは大きく、「俺、新宿のビルで働くんだー」とか言う。
「治療」しようと思った親族が精神科に強制入院させるもの、「アルジャーノン薬」みたいなものがあるわけもなく、精神障害ということで年金を受給できるようになるが、母親が管理していたら、「年金でベンツが買えるはずだ」とか騒いで再入院になる。


というような性格の損な人の例などを知っています。

知的障害認定の段階で、もっと三百万人ですとか、認定を頼むようにして、数の力などでも福祉を進めてもらうといいのではないでしょうか。あと、あまりにも社会に「健康な知的障害者」の問題に対する啓蒙が進んでいないと思います。
療育手帳を持っていることが社会的に有利になる未来を期待したいです。

精神障害者福祉にも関連があるとも思うのですが、お力添えをお願いします。

突然恐れ入りました。

 

 

 

 

 

こんにちは。4日月曜日にメールした北海道の者です。

日本の精神科入院病床数は欧米中国などと比べて、人口比で五~十倍多く、問題視されています。
政府の障害者白書の、

http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h23hakusho/zenbun/zuhyo/zuhyo2_13.html
図表2-13 障害発生時の年齢階級(精神障害者・外来)

をご覧いただけると、統合失調症の十歳未満発病が14.9%カウントされていますが、適切な表現ではないかもしれませんが、「人格の病」ともいわれる統合失調症で人格が形成される15歳程度までに統合失調症を発症することはありません。
これは1990年代頃の、発達障害の概念が注目されだす以前の元自閉症児の人がカウントされていると公に精神科医も認めています。いまさら福祉を切れないそうです。
推定数、九万人ほどと計算されます。

これは一例ですが、一方、例えばインターネットで「思考盗聴」「電磁波犯罪」などと検索すると、病院にかかっておられない統合失調症の方が、ぞろぞろと検索されます。

先日書きました、「性格の損な(未認定の)知的障害者」の方で衰弱したような方もおられるかもしれません。
一方、例えばアルコール依存症は仕事中毒の人がなりやすいとも言われますが、建設作業で日銭を稼いでおられるような方でもアルコール依存症になっておられるケースもあります。この中にやはり知能指数70なかった方がおられる可能性も当然ありましょう。

統合失調症で当時の医療が悪くて痴呆化したようなケースももちろんありましょうが、それだけでは説明がつきません。
例えば糖尿病で衰弱して統合失調症にカウントされている方ですとか、3,4名知っています。
統合失調症の方が統合失調症にカウントされておらず、そうでない人がカウントされているというの、20万人以上程度あるのかもしれません。

刑務所のルポルタージュを書いた山本譲司さんによると、受刑者の22%が知能指数70なく、生涯で福祉とつながる機会を持てず、食い逃げしてわざと捕まるような人生で、「刑務所が最後のセイフティーネットになっている」というような実態があるようです。
 
精神科医でも「未認定の知的障害者250万人?」というような状況の認識がない人も少なからずおりまして、警察の冤罪作りではないですが「適当にカルテを作文して『馬鹿』を怒る」ような仕事をしている精神科医などもおります。

学校のクラスに一人程度は「健康な知的障害者」がいるという実情、もっと啓蒙されるべきではないでしょうか。
諸外国では人口に占める障害者の割合が10%程度カウントされていますが、日本は5%程度でしたでしょうか。
勇気をもって、300万人の数の力ででも福祉を進めてくださればと願います。
ぜひ頑張ってください。

 

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