詩集『ワルシャワより』のご紹介(国際結婚、渡欧)
谷口水夜さん(鬼武彦さん)に関しては、『ノルウェイの森』論と短歌をご紹介しましたが、詩も書いておられます。
それにしても、病を抱えながら国際結婚して渡欧なさったというのは大変なご苦労だったと思います。今は仕事と子育てもなさりながら、当誌を中心に文学活動でも活躍しておられます。
どの詩をご紹介するか迷ったのですが、ぜひ当誌の『ワルシャワより』の方ご覧くだされば。
詩集『ワルシャワより』(谷口水夜)
から、2篇ほど、
「蜜月」
グダインスクの海へと続く松林歩きて香るを胸深く吸ふ
沈む陽にオレンジ色の波打ち際を妻と二人して素足に歩む
グダインスクの浜辺は歩くと音が鳴り鳥取砂丘の鳴き砂思ひぬ
白き砂海の青さと山のなき景色はカミユの『異邦人』のごと
松に懸かる月は日本にても似たりグダインスクの海辺を妻と歩みて
打ち寄する波打ち際を妻がゆく足跡踏みて吾も歩みぬ
松林香り満ちたるグダインスクに一週間の休みを瞬く間に過ぐ
「もしも夜が明けぬ時」
どうせ俺の行く先は
真っ暗闇の地獄と決まってゐる
この世も地獄に変りは無いが
何かしらの自然の光は見ることが出来る
死ねば無限の闇の中
水溜まりに影を射す陽光も
この世の見修めと思へば
妙にいと惜しい
これから何年生きるやら
先の見えない話だが
朝には陽のひかりで目が覚めるんだ
もしも夜が明けぬなら
その時は命が尽きたと思へばいいさ
永遠の闇の中で膝を抱へ
いつか見た水溜まりの陽光を思いださふ
さふやって生きて来たんだ
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