犬儒のブログ

当事者のアマチュア文芸雑誌の編集顧問を務めています。『ノルウェイの森』の直子と同病の単純型統合失調症です。

あーあ、人生で良い事クララちゃんしかなかったなー。心因で動けなくなってたの。僕が治しましたー。(?)

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 クララちゃん、混迷状態で入院していたの。

 観察室から出てきたら、談話室でコーヒー飲んでる俺の前に座って俺にマジ恋しちゃったみたいなの。

 どっか行ってもまた戻ってきて、俺の目をマジマジと見つめるの。

 綺麗な子だったらから、俺、凄い嬉しくて、見つめ合っちゃったりしたの。

 なんか会った初日から、恋の絶頂のように沈黙で見つめあった。

 またどっか行ってもまた戻ってくるの。

 女の子に特別に思われたようで、凄く嬉しかった。

 恋されちゃったんだねー。

 生涯最大の大ヒットだったなー。

 クララちゃん、だんだん元気になっていって、俺と信頼関係築けたら、ほとんど治っちゃった感じだった。

 「緊張型精神分裂病」と診断されたようだが、まあ、「古典的ヒステリー」だったろうと思う。

 古典的ヒステリーの病因は「性的欲求不満」(ばきっ)

 男女の信頼関係、非常に大事ですねー。

 そのあと、桃色の日々だったのー。(?)

 

 

犬儒のHP〜本格派「当事者」雑誌

『暁』

 

     二

 観察室にいた若い女は入院から数日が過ぎて一般の病室に移ったようだ。
 僕は北海道の寂代(さびしろ)市の病院の精神神経科病棟で療養をしている。
 普段着を着ている人が多いが、女は昼も部屋着でホールなどにたまに出てくるようになる。薄クリーム色にライトブルーの部分が少しあるパジャマのような服だ。いたいけな若い女性、死と闘う病状がせつなさを感じさせる。
 病院は寂代市にしては立派な造りでライトグリーン系の内装もモダンな感じがしたが、全体的に澱みのような印象が付きまとっていた。面会室など、各種の細かい部屋がある。
 僕が談話室で十冊ほどの本を少しずつ読み進めていると女が憔悴したような沈痛な面持ちで部屋に入ってくる。ステレオはチャイコフスキー交響曲第四番の第一楽章が流れている。ブランケンブルクの『自明性の喪失』を再読している。旧西ドイツの病院での精神分裂病の各亜種の統計数字。僕はページ数を暗記して本を山の中村雄二郎の『共通感覚論』の上におく。
「こんにちは」僕は言う。
「こん……」女が返事をする。
 女はやや肩を狭めたような雰囲気で所在なさげにか細く僕の前のソファに座る。女は少し目を落としてから僕を茫洋と見つめる。
「有村(ありむら)さんていうんだよね?」僕は病棟からナースステーションの壁に貼ってあった病室配置表を見ていた。
「うん」有村茜(あかね)は少ししんどそうに答える。彼女の視線は何かを問いかけるように僕の眼鏡を捉えている。
 なにか喋りたい風でもあるが、彼女は喋らない。
 僕は美しい女性に見つめられて少しどぎまぎする。
 しばらく様子をみるが、彼女は陶酔したかのように懐かしげに僕を見つめる。彼女の印象を一言で言うとやつれていた。
「コーヒー飲む?」僕は尋ねる。
 彼女は少し手元を見るがまた視線が茫洋となる。ゆっくりと目を上げる。
 僕は流し台からありあわせのカップを持ち帰りタッパーウェアから粉をついで水を汲みに行く。氷無しのアイスコーヒーを作り戻って彼女の前のテーブルに置く。
 有村茜はやや目を伏せながら少しずつコーヒーを飲む。やはり憔悴したようで、動作はスローモーだ。僕は彼女がコーヒーを飲んでくれたので嬉しい。
 カップにコーヒーを少し残してテーブルに置き、ゆっくり目を上げてまた何かを問いかけるように僕を見つめる。
「もう一杯飲む?」僕は自分のコーヒーを飲みながら尋ねる。
 よくわからないが、もういいようだ。
 また僕はどぎまぎするが、痩身の彼女は僕の目を見つめるようだ。
 彼女の顔は各パーツが大きめかなという感じだが、美人に見える。化粧はしていない。髪はセミロングで繊細な感じ。肌は白く、まだ少女と言ってもおかしくないように見える。鼻筋が通っており、目は何かを問いかけるように無垢で純粋だ。
 どんなカップルでも、親しくなれば黙って見つめあうくらいのことはある。それが唐突に少し早く来ただけだと思う。僕は美しい恋人に酔うように彼女の瞳を優しく見つめる。
 彼女は思いついて席を離れてホールであちこち行ってもしばらくしてまた戻ってきて悲しみにも近いような目線でまた僕を見つめる。
 僕は彼女が僕を特別に思ってくれているように感じて嬉しい。
 何度か僕の前に戻ってきて、部屋に戻って横になる。
 夕暮れが近付いている。
 次の日もまた二人でコーヒーを飲む。僕は少し彼女に話しかけるが、あまり返事は期待しない。沈黙に耐えられる関係は恋の成熟を示すと思っているが、思わぬところでそういう女性を得たと感じる。僕は彼女を愛おしく感じる。
 ブラームスのヴァイオリンソナタを聴いたりする。
 彼女が戻ってくると僕は本を置いて彼女のまなざしに答える。性的カタルシスの予兆というよりはもう少し悲痛なようにも僕らは見つめあう。優しい気持ちがわきあがる。
 そんな不思議な日々が三日続く。

 

↓36位。精神科ほんと誤診多いよねー。ものの本によると外来で2,3割誤診だって。

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