俺の宗教を超越したルネッサンス的天才?風ショートショート作品2点(『犬儒の本』より)
より
ショートショート『正しい街』
ぴんぽーん。
青年がアパートのドアを開けると美少女が立っていた。
「突然恐れ入りますが、祈らせてください」
「え?」
「あなたの為に三分間ほど祈らせていただきたいのですが」
「え? ……僕は仏像じゃないですよ??」
「私が観音様なんですよ」
「あなたは観音様なんですか。そんなこともあるんですかね??」
「たまにはそんなことも起こるんですよ」
「はあ。そうなんですか。……あの、お布施とかいるんですか?」
「いいえ、いつも霞ですとか食べていますのでいりません」
「そうですか。ダイエットとかですかね。……あの、玄関先じゃなんですから、お入りになってお茶でもいかがですか?」
「おじゃましてもいいのですが、まずは祈らせてください」
「そうですか。じゃあ、お願いしますか?」
「……」
「……?」
「……??」
「あの、観音様ですか、なにか分かったことですとかありますか?」
「いえ、特に何かを理解するためにやっているわけではないのですが」
「そんなものですか」
「ただ、あなたは良い方だと思いました。でも、悪い人になることも大事でしょう」
「そうですか?? あの、お茶はいかがですか」
「いえ、やはりお取り込み中でしょうからおいとまします」
「そうですか。ご苦労様でした」
青年は机の前に戻ってしばらくぼおっとしていた。そして書きかけだった遺書を破り捨てた。
ショートショート『やりたかった結婚式』
十二ヶ滝市役所の市民課の窓口の女性は退屈でちょっとあくびをかみ殺した。
男女の二人連れがこちらの方に来るようだった。何の人だろう。
中年の眼鏡をかけた男性とやや若い女性。二人ともスーツを着ている。
「婚姻届をお願いしたいのですが」男が言った。
「あ、はい」
「あの、その前に、突然恐れ入りますが、非常に申し訳ないのですが、この場をお借りしましてちょっと結婚式をやらせていただきたいのですが。それほどお邪魔にはならないと思うのですが」
「え、、、確かそういう形式の結婚式もありましたが、当方の事前の許可が必要だったと思うのですが」
「いえ、まったく皆さんのご迷惑にはならないかと思います。30秒もしないで済みます。言葉は悪いのですが、黙認していただけませんか」
「はあ……」
二人は窓口から少し離れてから握手した。そして窓口に戻ってきた。
「この婚姻届をお願いします」
彼女は書類をチェックしたが、整っていた。
「受理いたします、……あの、」
「はい」
「あの、おめでとうございます」
「ありがとうございます」不釣合いなほど若い新婦が言った。
「ありがとうございます。こういう結婚式をやりたかったんです」分厚い眼鏡をかけた新郎が言った。
「大変おめでとうございます」
夫婦は飄々として立ち去っていった。
彼女はほとんどあっけにとられていた。
そして、しばらくしてから途方にくれた。
↓44位。クリックしてー。思想的葛藤とかは、精神疾患とか引き起こすかもねえ。